基本金の身近な例え

学校会計では基本金がむずかしい、といわれています。

基本金は、「基本金とはなにか」を説明するよりも、「基本金はどんな役目をするか」を説明するほうがわかりやすいようです。

そこで、たとえ話によって基本金を説明してみましょう。

身近なたとえ話

Aさんは120万円のお金と300万円で買った土地を持っている。借金はない。
Aさんは、月々の支払もあるし20万円のお金を家庭維持のため持っておきたいと考えている。
このたび銀行から240万円の借金をして340万円の家を建てることにした。借金は20年払いとした。
Aさんの給料は年収250万円なので、毎月の生活費は利息を含めて18万円できりつめ、毎月1万円の元金の返済をする。
家は20年後に建てかえることにして、毎年17万円の減価償却をおこなう。

(1)1年目のAさんの計算はつぎのようになる。(単位万円、以下同じ)

(注)
生活費支出=18×12か月=216
借入金返済支出=1×12か月=12
基本金組入額=自己資金 100+借入金返済 12=112
建物=取得価額 340-減価償却額 17=323
消費収支差額=当初の消費収支差額 100-消費支出超過額 95=5

つまり、1年目のAさんの計算では、建築初年度のため基本金組入が多額となって消費支出は赤字となったが、正味財産は17万円増加しているので、あとの計算でわかるように心配はいらないといってよい。

(注)
正味財産=プラスの財産(資産)-マイナスの財産(負債)
当初の正味財産=資産 420-負債 0=420
1年後の正味財産=資産 665-負債 228=資本金 432+消費収支差額 5=437
正味財産増加額=437-420=17=基本金組入額 112+消費収支差額 △95

(2)Aさんの給料と生活費はかわらないとして、2年目の計算はつぎのようになる。

(注)
基本金組入額=借入金返済支出 12

Aさんの給料収入と生活費支出がかわらないなら、支払資金は今後年々22万円づつ増えていく。また、正味財産は17万円づつ増えていく。
年々の正味財産増加額17万円のうち、12万円は基本金となり、5万円は消費収支差額となる。

(3)Aさんの給料と生活費は変わらないとして、20年後の貸借対照表はつぎのようになる。

(注)
建物は、年々の減価償却によって0となる。
借入金は返済が完了して0となる。

このように、20年後は現金預金は460万円となり、340万円の家を借入なしに自己資金で、再取得することができる(ただし、インフレがないとして!)。
もっとも、20年間のあいだに、自己資金でたとえば機器備品を取得すると、現金預金のかわりに機器備品が貸借対照表にあらわれ、20年後の再取得資金が不足することになるかもしれない。
しかし、これは家の再取得のための自己資金を他に転用しただけで、議論の本質はかわらない。

(4)参考までに、Aさんの1年後の基本金組入れの状態を表にあらわすとつぎのようになる。
資産 取得価額 要組入額(A) 組入済み額(B) 未組入額(A)-(B)
土地
建物
現金預金
300
340
42
300
340
20
300
112
20
0
228
0
682 660 432 228

また20年後はつぎのようになる。

資産 取得価額 要組入額(A) 組入済み額(B) 未組入額(A)-(B)
土地
建物
現金預金
330
340
460
300
340
20
300
340
20
0
0
0
1100 660 660 0

(注)
基本金組入れの時期は、自己資金によるものはただちに支出年度に組入れる。ひもつきの借入による分は、借入返済のつど組入れる。

(5)さて、これまでみたように、「学校法人会計基準」は、教育に必要な施設設備を自己資金で取得してほしいとの願望をもっているのです。

もっとも現状は資金不足のため借入れにたよるのはやむをえないけれども、施設設備の耐用年数がつきたあかつきには、自己資金だけで再取得してほしい、そのためには施設設備の取得設備の取得価額を基本金に組入れておき、基本金組入れ後の消費収支が長期的にプラスになるように運営すればよい、と会計基準は主張しています。
かりに、Aさんが家計費をきりつめるのに失敗して月々1万円だけ多く使ったとすると、20年間の支出は240万だけ増えてそれだけ現金預金が減少してつぎのようになります。

現金預金は220万円となって、340万円の家を自己資金だけで再取得することができなくなります。
これでは困ると会計基準はいっているのです。
つまり、基本金は、施設設備を自己資金で再取得する役目をになって学校会計に登場したのです。
ところが、会計基準は物価は上がらない、いいかえると、貨幣価値は下がらないという前提にたっています。
Aさんの家が20年後に今と同じ340万で再取得できるというのは、だれが考えても現実的ではありません。
年々4%づつのインフレで、20年後は約2倍という計算になるからです。
インフレを考慮していないという意味では、学校会計だけでなく、企業会計そのほかいまの会計はすべて矛盾をかかえています。
いわゆる、インフレーション会計はアメリカの実務ではじまったばかりで、日本の会計実務にはまだ採用されていません。
しかし、学校会計の基本金は、インフレを考慮していないという問題を含めて、このように説明したほうがわかりやすいといえます。

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