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自己資本比率が高ければ優良企業といえるのか?

自己資本比率が高ければ優良企業といえるのか?

自己資本比率とは、経営の安全性を見る指標です。
自己資本とは、資本金や、いままで稼いで蓄えてきた利益など誰の負債でもない返す必要のない分のことです。

この自己資本と、銀行などに返済しないといけない借入などの割合を、自己資本比率は示しています。自己資本比率40%とは、すべての資産(総資産)のうち、返済する必要のない自己資本が40%、返済義務を負っている分が60%という意味です。

当然、返す必要がない割合が多いほうのが、企業は倒産などのリスクが減るため良いこととされています。そのため自己資本比率はできるだけ100%に近い方がいいと考えている人もいるようです。

よく言われる自己資本比率60%以上とは

自己資本比率は、60%以上を目指すといいとされていることが多いようです。
確かに、自己資本比率が60%であれば、返済義務がある分は残りの40%ですから、最悪のケースになったとき、自己資本で負債をすべて返済したとしても10%が残ることになります。
仮に自己資本が50%だと、すべての負債を返済したら、自己資本も0になってしまうので、ある意味もうやり直しができません。ですが、10%が手元に残れば再スタートができるかもしれないという考え方もできます。

自己資本比率が高いことはいいことなのか

35%、42%、14%。(2016年3月末)
これは、どこの企業の自己資本比率かわかりますでしょうか?
左から、トヨタ自動車、日本電信電話(NTT)、ソフトバンクグループになります。

これらは誰でも聞いたことがある日本を代表するような企業です。
そういった企業でも自己資本比率はこのぐらいとなっています。
とても60%なんて言えた数字ではありません。

これらの企業を自己資本比率が低いから優良企業ではないと言えるでしょうか?
決してそんなことはないと思います。

確かに自己資本比率は高い方が安全性が高く、良いことなのでしょう。
ですが、自己資本比率が高いがために、企業の成長力を抑えてしまっているとも言えます。

事業を拡大していくためには資金が必要で、借入があった方が企業の成長速度は速くなるということです。

例えば、自己資金100万円で年利5%ぐらいの利益を生み出せる企業があったとします。
自己資金のみでの運営の場合は、一年間の利益は5万円です。

仮に、この企業が100万円の借入をして運営した場合には、自己資本比率は50%になってしまいますが、事業資金は200万円になるので、利益は倍の10万円です。

年利1%の借入に対する金利を支払ったとしても、10万円-1万円(100万円×1%)で9万円の利益です。

成長力と業種

自己資本比率の高さと企業の成長力には、ある意味相反する関係性があります。
特にソフトバンクグループのような高成長企業は、自己資本比率が低くなることが多くなります。

また、銀行のように、資産のほとんどを預金者からの借入(普通預金や定期預金など)でできているなど、業種によっても自己資本比率は変化してきます。

つまり、自己資本比率が高ければそれでよい企業だと言い切れるものではなく、その企業の業種や事業内容、利益成長力やキャッシュフローなど、さまざまな要因を複合的に見て判断する必要があるということになります。

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この記事を書いた人
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会計事務所に勤務ののち、2016年12月法人を設立。税理士と提携しクラウド会計ソフトの導入と経理支援を行う。またAFP資格を有し、生命保険や株式投資、資産運用などファイナンス分野でのアドバイスも行う。
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