トヨタ自動車の経営学をおさらい

トヨタ自動車の経営学をおさらい

継続的な改善により学習する組織になる

在庫を必要としないプロセスを作る。
そうすると、全ての人が時間と資源のムダに気づく。ムダが明るみに出たら、従業員に継続的改善プロセスに取り組ませ、ムダを除去させる。

プロジェクトのあらゆる欠点をオープンにするために、重要な節目やプロジェクト終了後には、反省をする。そして同じ間違いを避けるために対策を立てる。

意思決定はじっくり、実行は素早く

完全に検討が終わるまでは、ある方向を選択して行動しない。
意思決定の前に徹底して考え抜く。他の企業から転職してきた従業員は、トヨタのような効率的な企業がなぜこのような細かく、遅く、複雑なのか理解に苦しむことが多いという。

アレックス・ウォーレン氏(トヨタ・モーター・マニュファクチャリング)
「1年後に導入が終了する予定のプロジェクトがあるとすると、大抵の米国企業では計画に3ヶ月かけてすぐに導入に入る。しかし、導入後にさまざまな問題に遭遇し、結局1年間の残りは問題対応に費やす。
ところが、トヨタは同じ1年間のプロジェクトを与えられると、そのうち9~10ヶ月は計画に費やし、それから試行生産ラインなどの小さい規模で導入をはじめて、1年後には導入が終わっており、残っている問題点は事実上ゼロになっている。」

現地現物を徹底的に実践する

コンピューターの画面が教えてくれるものに基づいた分析よりも現場に出かけて実際に観察し確認することで、問題を解決し、プロセスを改善する。

トップや役員であっても、現地で現物を見て理解するということは実践すべきで、そうすれば状況の表面的な理解以上のものを得るはずだ。

このことについて、大野耐一氏は以下のように発言している。
「製造現場を先入観なしに、白紙の状態で観察せよ。あらゆる事柄に「なぜ」を5回繰り返してみよ。」

パートナーや部品メーカー等の社外ネットワークを尊重する

自社のパートナーや部品メーカーを尊重し、自社を延長した社外ネットワークの一員として扱う。
外部パートナーが成長と育成をするように仕掛ける。また、パートナーが改善できるように、かなり高い改善目標を設定する。

外部部品メーカーより
「トヨタは、他社に比べて実践的で、自社のシステムを熱心に改善して、それが私たちの会社の改善につながることを教えてくれます。また仕事がしやすくなるように平準化をしてくれます。」

会社の考え方に従順な人間とチームを育成する

会社の価値観や新年が何年にもわたり全員に共有され実行されている強くて安定した文化を構築する。
会社の基本思想に忠実に行動して、卓越した成果を出せるような個人やチームを育成する。またその努力を続けていく。チームワークは意識的に教育しなければならない。

サム・ヘルトマン氏(トヨタ・モーター・マニュファクチャリング)
「人を尊重することと絶えず改善を求めることは、矛盾するでしょうか?人を尊重するとは、その能力を頭脳を尊重することです。時間を無駄に過ごすべきだとは考えないでしょう。その人の能力を尊重するからです。
アメリカ人が考えるチームワークとは、互いに親しくなることです。相互に尊重し信頼するとは、相手が職務を全うするから会社が繁栄すると信頼して尊重しあうことです。単に気が合うとは違います。」

仕事をよく理解し、模範となるリーダーを育成する

リーダーは社外からスカウトせず、内部で育成する。
リーダーは、単に仕事が出来てコミュニケーション能力が高ければいいというわけではなく、会社の基本思想や事業の方針などを身をもって示す模範でなければならない。
もちろん、それには日常の業務を詳細に理解していなければならない。

アレックス・ウォーレン氏(トヨタ・モーター・マニュファクチャリング)
「幹部が従業員全体のチームに働きかけ、リードしていかなければ、それぞれの頭脳と能力を活用しきれない。トヨタでは、従業員1人1人を大変重要視し、その言葉に耳を傾け、彼らのアイデアを私たちの計画に反映させることに最大の力点を置いています。」

新しい技術よりも、信頼性のある枯れた技術を優先する

新しい技術の多くは、信頼性が低く、標準化が困難であるので流れを乱しやすい。一般的には実績の無い新技術よりも、安定して動く枯れた技術を優先するべきである。ただし、新技術でも実地試験を合格して工程の流れを改善できるならば、素早く導入する。

また、新技術は人をサポートするために導入するのであって、人を減らすために入れるべきではない。
自動化する前に人での作業のままで改善する方が良い場合が多い。

豊田英二氏(トヨタ自動車元社長・会長)は以下のような発言をしている。
「ボタンを押せば直ちに膨大な量の各種技術、経営情報が出てくるまで、社会が発展した。これは非常に便利かもしれないが、気をつけていないと考える能力をなくしてしまう危険がある。最後に問題解決をするのは人間であるということを忘れてはならない。」

全ての問題を顕在化させるために目で見る管理を行う

シンプルで視覚に訴える表示方法を導入し、誰でも自分たちが正常な状態なのか、そこからはずれているのかが一目でわかるようにする。
たとえ最も重要な仕事上の判断をする場合でも、報告書は可能な限り紙一枚以内に限定する。

張富士夫氏は以下のような発言をしている。
「大野さんは、TPSに関しては大変厳しかった。問題点が見えるようにすべてをきれいにするように言われました。自分で見て、問題点があるどうか分からないようだと怒られました。」

標準化作業によって、生産性の改善と従業員の自主活動の土台を作る

作業者それぞれが仕事に対して持っているコツなど、人によって仕事の仕方は違います。ここで言う標準化というのは、その仕事のやり方・プロセスなどをある程度同様にしようとするものです。

標準化についてトヨタ自動車元副社長の大野耐一氏はこう発言しています。

「標準作業書とそれに記載された情報は、トヨタ生産方式の大事な要素である。生産関係者が他の作業者が分かるように標準作業書を書くには、まずその重要性を理解していなければならない。不良品発生や作業ミスや事故の再発を防止したり、作業者自信の提案を組み込むことによって高い生産性が維持される。こういったことは、すべて地味な標準作業書のおかげである。」

問題を解決するためにラインを止める

1つでも不良が発生するとラインを止めたり遅らせたりする思想を構築する。

これは長い目で見て生産性を高めることになる。

生産設備に問題を自動的に検出して停止する機能をつけ、目で見る管理システムを開発する。

以下はこれに関する張富士夫氏の発言です。
「大野さん(トヨタ自動車元副社長)は、ラインを止めた際に判明した問題は遅くとも明日の朝までには解決しておくようにと言っておられた。1分に1台づつ車を作っている工場では、問題を根本から解決しておかないと同じ問題が明日も再発するからです。」

生産量を平準化する

平準化するというのは、時期によってばらついた生産を均一にするということで、これによって人や設備に対する過負荷を防止できる。

ロットで作ることは一般企業では多く見られるが、そうではなく、あらゆる生産・サービスの負荷を平準化する。

これについてトヨタ自動車元社長の張富士夫氏は、下記のような発言をしている。

「一般的にTPSを適用する場合に最初にすべきことは、生産を平準化することです。これは主として生産管理部門の仕事です。生産を平準化するということは、お客様に対する出荷を多少前倒ししたり、遅らせたりする必要があるため、お客様に少しの期間だけ待っていただく場合もあります。生産平準が1ヶ月間ほぼ一定になるとプルシステムを導入して組み立てラインをバランスすることが出来ます。しかし、生産水準、つまり出荷量が日によって変化すると標準作業が使えなくなるので、こういった仕組みを導入する意味がなくなってしまいます。」

作りすぎの無駄を防ぐ

客が必要とするものを、必要な時に、必要な量だけ供給する。

(必要最小限の在庫のみで100%受注生産に近い状態)

各製品の在庫は少しづつにし、消費した分だけを補充することによって、仕掛と在庫の倉庫での保管を最小限にする。

管理はコンピュータ上のシステムに頼らず、社会のニーズや需要に敏感に反応する。

淀みの無い流れを作って、問題を表面化させる

仕事について、次の作業が始まるまで何もしないで待っている時間を出来る限りゼロにする。

製品や情報が速く流れるように流れを作ると同時に、問題点がすぐに顕在化するように、プロセスや人の間を緊密につなげる。

特に「流れ」については重視し、これは絶え間ない改善のプロセスを実現し、従業員を育てるための重要な要素である。

?トヨタ・モーター・マニュファクチャリング 元社長 蓑浦氏は、

「1個でも、流し生産で問題が起こると生産ラインが止まります。その意味ではとても悪い生産システムです。しかし生産が止まるとみんなが問題を直ちに解決せざるを得なくなります。チームメンバーは頭を使わなければなりませんが、それを通じて各自が社員としても人間としても成長します。」
と発言している。

トヨタウェイ ~ビジネスの原則より~

長期的な考え方で経営判断をする

トヨタ自動車は短期での利益を超越した目的意識を持っている。

会社を、単なるカネ儲けではなくもっと大きな目標に向かわせ、方向付けて、成長させることを意識している。

社員は、自分の顧客や社会と経済に対して付加価値を創造し、あらゆることを見直す必要がある。

また、自己責任を持ち、自らの運命を切り開くように努力する。そして自分の能力を信じ、自分の行動の責任は自分でとり、付加価値を生み出すための能力を改善する努力を続ける。

元米国トヨタ自動車販売副社長のロバート・B・マッカリー氏は、

「成功するために最も大事なことは、忍耐であり、短期的な結果より長期的な成果に意識を集中すること、人・製造・工場に対する再投資と品質に対する執拗なまでのこだわりです。」

と発言している。

ザ・トヨタウェイ  ~トヨタのビジネス原理より~

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