人類の経済的発展とともに、不可避的に発生し進化していった簿記会計という技術。その進化の節目に現れた、簿記会計が飛躍するための要素を簡潔にまとめてみました。
貨幣の出現とともに
物々交換の時代を経て、貨幣が造られました。
貨幣の出現は、商業取引を活発化させて人類の経済的な発展を促しました。そして、交易範囲は拡大し簿記会計の進化が必要に迫られるようになりました。
数字の変遷とともに
まずは、ローマ数字とアラビア数字の違いから。ローマ数字は、記録するのにすぐれているという特長を持っています。
しかし、計算する場合、掛け算・割り算に不向きなのだそうです。ですが、ローマの人々は計算にソロバンを用いていたので不便はなかったということです。
そこへ、インド発祥のアラビア数字がもたらされます。アラビア数字は算用数字とも呼ばれ、計算するのにとても便利です。特長は、0(ゼロ)の概念があること。それにより、位取りが表現できて、ローマ数字よりも完全な10進法となっています。
アラビア数字で書くと275となるところを、ローマ数字になれた人がアラビア数字を習いたてで表現すると200705と書いてしまったそうです。
現在では、アラビア数字が基本です。このことも、簿記会計の記帳に大きく貢献していると言えます。
紙の発明とともに
紙の発明は、西暦105年に中国・後漢の祭倫(さいりん)によってなされました。
主に、樹皮を材料としてできた紙で、西暦751年にアラブ人に伝わりました。西暦1276年に、紙の製法がイタリアに伝わると製紙工場が次々とできました。
このことにより、会計記録を紙に残すことが可能になりました。
印刷技術の発展とともに
印刷技術の開発は、紙が普通に用いられるようになってから始まりました。
1423年、オランダで初めて活版がつくられ、1438年に木版活字が発明されると、本格的な印刷がスタートしました。
このことは、簿記会計に限ったことではありませんが、教育の現場などで使われるテキストの増刷につながりました。
1494年に印刷された『ズムマ』はそのころ印刷されました。ズムマは、イタリアのパチョーリが書いた数学書ですが、簿記に関しても記述があります。
複式簿記のほとんどの内容が説明されている、古典的名著です。
学校教育の拡大とともに
学校の授業に簿記が取り入れられたのは、市民が実務を身に付けるように創立された学校においてでした。それまでは徒弟制度で簿記の知識や実務は受け継がれていました。
西暦1747年のドイツでひとつの学校が創られました。クラスが産業別に分かれており、そのなかに簿記コースがあったようです。この学校は発展し、商業取引を仕事とする若者が増加したそうです。
アメリカでは、西暦1821年に最初のハイスクールがボストンにでき、そのなかに簿記会計の授業がありました。
アメリカの職業教育は主に私立で発展しました。
最初のビジネス・スクールは1881年にフィラデルフィアで創られました。ニューヨーク大学では会計学の夜間大学が設置されました。
アメリカのとりわけ簿記教育に貢献したものに通信教育制度があります。
この教育制度は、イギリスが発祥の地ですが、アメリカにも伝わり、1873年にボストンで始まりました。それ以後、急激に広まっていき、それと同時に簿記会計の実務的な知識が広まっていくこととなります。