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役員報酬は期中に増やしていいの?期中に増額した場合の税務上の取り扱い

役員報酬は期中に増やしていいの?期中に増額した場合の税務上の取り扱い

新しい事業年度が開始し、蓋を開けてみると当初の見込みより突発的な受注が続き、業績が思いのほか好調。

そんなときオーナー企業の役員であれば、役員報酬を増やしたい、と思ったこともあるのではないでしょうか。
今回は期中に役員報酬を増額した場合の税務上の取り扱いをテーマにしたいと思います。

そもそも役員報酬はどのように決まるのか

役員報酬は誰が決めているのでしょうか。
役員といってもただの取締役もいれば、常務取締役、専務取締役、代表取締役社長、また法人税法上のみなし役員等それぞれの会社でいろいろな立場の方がおられると思いますが、今回は会社法上の役員に焦点を当てて見ていきます。

会社法抜粋

第三百二十九条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

第三百六十一条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

固い言い回しですが、要するに会社法では取締役、会計参与及び監査役のことを役員と言いますよ、役員は株主総会で選びますよ、役員の報酬については定款又は株主総会で決めますよといっています。

実際のところ、定款にて役員報酬を定めているケースはあまりないと思いますので、通常は株主総会で決議されるものと思います。

また、その決議については、個別の支給額を決める場合もあれば、株主総会では支給限度額だけを決定し、個別の支給額は取締役会や代表取締役に一任する場合もあります。

期中に増額すると損金不算入?

それでは、株主総会等の決議等の手続きを正当に踏んだとして、期中に役員報酬を増額した場合、税務上の取り扱いはどうなるのでしょうか。
結論から言うと、期中に役員報酬を増額した場合、その増額した報酬を法人税法上損金に算入できない場合があります。

役員報酬については、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与のいずれかに該当する場合に限り、法人税法上損金算入が認められています。

期中に役員報酬の増額改定を行った場合には、通常この3つのどれにも該当しないこととなるため、増額分の報酬は損金に算入できないということになります。

ただし、定期同額給与についてその改定が、「3ヶ月以内の改定」または「臨時改定事由による改定」に該当する場合に限り、役員報酬の全額損金算入が認められます。

損金算入が認められる場合

「3ヶ月以内の改定」とは、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から、3ヶ月を経過する日までに、継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定のことを言います。

要するに事業年度終了後に3ヶ月以内に行われる定時株主総会での改定であれば問題なしということです。ただし、この場合においても改定前は前で同額、改定後は後で同額でないと定期同額給与には該当しません。

また、「臨時改定事由」とはその事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情のことであり、そのような事情による改定を「臨時改定事由による改定」と言います。

すなわち、任期中に社長が退任し、副社長が新たに社長に就任した場合等については、増額が認められるということです。

なお、この場合においても改定前は前で同額、改定後は後で同額でないと定期同額給与には該当しませんのでご留意ください。

まとめ

オーナー企業では役員報酬は利益調整に使われる可能性があるため、法人税法上様々な制限がされております。

せっかく事業が好調なのに、うっかり増額改定して想定外の税金を支払うことにならないよう、注意が必要ですね。

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この記事を書いた人
山田 大悟
山田 大悟
税理士。大企業から中小企業まで、会計・税務業務に10年以上従事。現在は一般企業の経営に携わる。
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