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費用?それとも取得価額?未経過固定資産税の取り扱い

費用?それとも取得価額?未経過固定資産税の取り扱い

企業活動では日々様々な取引を行っていますが、中でも大きなお金が動くのが設備投資。

特に本社の移転や支店拡大など不動産関連の投資には、企業の今後の行く末を左右するくらいの大きなものも珍しくありません。

そうそう何度も経験するものではないだけに、処理に迷う部分が出てくることもあるかと思います。
今回は、未経過固定資産税の取り扱いをテーマにしたいと思います。

そもそも未経過固定資産税とは何?

例えば、自社が土地付き建物を購入した際に、売主に固定資産税等の未経過部分としてお金を支払ったことはないでしょうか。
これが今回のテーマとしている未経過固定資産税と呼ばれるものです。

未経過固定資産税を説明するならば、不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過期間分を買主が分担する場合の分担金という内容になり、不動産売買における取引慣行として広く認められるものかと思います。

なぜ未経過固定資産税が発生するのか

未経過固定資産税の支払いという商習慣が発生する理由は、固定資産税の課税方法に理由があります。

固定資産税は賦課期日(毎年1月1日)現在の固定資産(土地・家屋・償却資産)の所有者に、その資産の価値(価格)をもとに納める税金です。

よって、仮にその年度の賦課期日後に所有者が変わっても、その年度においては新たな所有者が固定資産税を負担するわけではありません。

そのため、年度途中に不動産を売却した場合、もともとの所有者は、売却した後の期間に対応する固定資産税相当額を、売買の際に買主に請求するという商習慣が成立します。

言い換えると、不動産に係る固定資産税等は年度ごとに課されるものですが、これを1年間の租税と考えて、売買後の所有期間に応じて期間案分して買主に負担してもらう、というのが未経過固定資産税という商習慣の考え方です。

未経過固定資産税の取扱い

それでは未経過固定資産税の取扱いはどうすればよいのでしょうか。考えられる処理として、大きく分けて以下の二つになるかと思います。

1.固定資産税等に準じて、あくまでも租税公課として費用処理する。
2.不動産の譲渡対価の一部を構成するものとして取得価額に算入する。

どちらの可能性もありそうですが、国税不服審判所裁決の裁決事例によると、②の取得価額に算入が妥当と言えます。

該当の裁決:平成25年8月30日裁決

リンク先の裁決は非常に長々と記載されておりますが、あえて簡単に言うならば、未経過固定資産税は租税公課ではありません、未経過固定資産税を支払うことは売買の取引条件の一つであるため、未経過固定資産税は固定資産の取得価額に含まれます、という内容になります。

まとめ

不動産取引は金額が大きい場合が多いため、未経過固定資産税といえどもそれなりの金額になります。

固定資産の取得価額となるか、当年度の費用として処理できるか、税務に与える影響も大きいだけに、注意したいものですね。

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この記事を書いた人
山田 大悟
山田 大悟
税理士。大企業から中小企業まで、会計・税務業務に10年以上従事。現在は一般企業の経営に携わる。
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