法人は、決算で税引前当期損益を算定します。
それに応じて法人税を支払います。それ以外に、住民税、事業税、地方特別税などがあります。
税引前当期損益が赤字の場合、法人税などは所得に対して適用されるため、払わなくて良いことになります。
一方、住民税には、均等割りで資本金や従業員数によりある一定の金額の税金を支払います。
3月決算の場合、前年4月から当年3月までの決算を行い、5月末までに税金を支払う必要があります。
5年間法人税を払っていなかったトヨタ自動車
さて日本が誇る大企業グループであるトヨタ自動車が5年間も法人税を支払っていなかったという2014年のニュースを覚えておられる方はいらっしゃいますか?
グループ全体で世界最高の自動車販売台数、1兆円を超える経常利益を誇るトヨタがなぜ5年間も法人税を払わなくてよかったのでしょうか?日本政府としては損ですね。
法人税を支払っていなかったのは、2008年度から2012年度の5年です。
この間で想像つくのは、リーマン・ショックです。六本木ヒルズのリーマンブラザーズの日本支社からダンボール箱で自分の私物を持ち出す社員の方のニュース映像が思い出されます。
トヨタ自動車のIR(Investor Relations)の決算報告を見ると、2009年3月期の税引き前当期利益は5604億円の赤字です。
赤字なので、この期に法人税を納める必要がなかったのは納得です。
法人税には、欠損金の繰越控除があります。財務上で赤字というのは、税務上欠損金と言います。
余談ですが、財務と税務で色々差異があるのは本当に面倒です。
財務諸表を税務署に提出したら、あとは全て税務署が計算して適当に法人税の請求書を送ってくれると良いのですが。
話を戻して、トヨタ自動車の場合も、欠損金の繰越控除が適用されます。
繰り越して適用される期間は、トヨタが赤字を出した当時は、7年間でした。
その後、9年間に伸び、平成29年4月1日以後に開始する事業年度は10年間になります。
つまり、トヨタ自動車は、赤字を7年繰り越せるわけですが、その後、2914億円、5632億円、4328億円、1兆4036億円の黒字を出していますので、2年で欠損金の控除は終わっていて、少なくとも2年目には法人税を支払う必要がありました。
トヨタ自動車が法人税を免除された理由とは?
それではなぜ、5年間払わなくてよかったのでしょう?
トヨタ自動車からは、その理由が説明されていません。不思議です。
株主にとっては嬉しい話なので、外部から突っ込まれることがなかったのでしょう。
日本共産党の「しんぶん赤旗」の記事によると、その理由として、「試験研究費の税額控除」と「外国子会社配当益金不算入制度」にあると見ています。
試験研究費の税額控除に関しては、試験研究費の1割程度を法人税から差し引くことができます。
トヨタ自動車クラスになると研究開発費は、相当な金額になりそうです。また、外国子会社配当益金不算入制度を利用すると、海外の多くのトヨタ自動車の子会社からの配当(株式でしょうね)に関しては、税法上の利益になりません。それらの結果、5年間、たまたま税法上は赤字決算だったわけです。
リーマン・ショックが無ければ、おそらく「試験研究費の税額控除」と「外国子会社配当益金不算入制度」があったとしても税法上は黒字だったでしょうから、偶然と言えばそうなのですが、これらの制度については再考の余地がありそうです。私としては、「外国子会社配当益金不算入制度」は今ひとつ納得できません。