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経理担当者はどこまで実戦部隊に介入するべきか

経理担当者はどこまで実戦部隊に介入するべきか

会社の経理部門の役目とは何でしょう?
経理とは、単なる商売の記録のため作業ではありません。経理の役割とは「経営管理」です。経理とは、会社の状況を正確に把握し、経営陣が的確な経営判断を行うための情報を提供します。
経理部門が作成する日々の財務データなどの経理資料は、経営者にとって最高の戦術材料となります。

戦術と戦略

余談ながら、戦術と似た言葉に戦略があります。
戦略で超中期の経営計画を立て、戦術で短期のビジネスを実践します。

わかりやすいのが、戦略シミュレーションゲームで、どのエリアにどの程度の部隊を展開させるかが戦略、各部隊にどのように戦わせるか(鶴翼の陣なのか、はたまた逃げの一手か)が戦術です。

経理が実戦部隊の細かいところに介入してきた

私の勤務していた会社では、経理部門などは「スタッフ」と言い、開発部門は「開発部隊」と言っていました。
補足すると、開発部隊には、ハードウェア設計・開発の部門、ソフトウェアの設計・開発の部門、お客様のシステムを設計・開発・構築・運用するシステムエンジニア(SE)の部門があります。
私の会社勤務10年目ぐらいの時にあった経理部門がらみの嫌な経験を書かせてもらいます。

私の所属する事業部では、英語力の向上が進められており、TOEIC IPテスト(正式テストとは異なり、会社内などで受けられるTOEIC)も定期的に行われていました。
ちなみに入社式の後にも新入社員一斉で受けさせられましたが、この時の点数が私のTOEIC最低点です。

当時の事業部では、英語力向上の施策の一つとして、英語図書の購入に予算が割り当てられておりました。
自主学習により、TOEICがそこそこの点数に伸びていた私は英語力向上担当者の一人として英語図書の選定を任されていました。

ある日、経理担当者から電話が掛かってきました。

・経理のAです。
・Bです。お世話になってます。
・本「X」の購入指示書が届いていますが、これはどこに置くんですか?(ここで既に喧嘩腰)
・事業部の英語図書の区画に置かれます。
・なんでこの本を購入するんですか?漫画じゃないですか!

当該の本「X」は、「金田一少年の事件簿」の英語版コミックスだったのです。
もちろんタイトルに英語版と書かれているのですが、そこを気にせずに漫画だからという理由で、不適切と判断し、怒りの電話を担当者である私に掛けてきたわけです。
結果から言えば、事業部長の承認を得ているものなので、経理担当ぐらいでは文句を言えるものではないので、Aさんは渋々電話を切って、購入は行われました。

当該の本を購入する理由は、もちろん明確で今から思えばもっとガツンと言えばよかったかと思いますが、振り返って経理の担当は開発部隊や他の社員からの物品等の購入に対してどこまで介入するべきでしょう?
例えば、開発部隊の管理職が、架空発注を行った場合、それを経理上でもし発見することができたならば、それを経理部門が問題化するべきです。

発注するものではなく、発注自体が不正でからです。
では、発注するものが不正だったらどうでしょう?ある社内システムを構築するとして、設計上あるネットワーク装置を必要とし、その製品を価格ではなく、それまでのネットワーク装置販売企業との付き合いや評判で選択したとします。随意契約みたいなものです。
それに対して、経理部門が、「他の企業が出しているネットワーク装置の方が、安いし性能が良い。なぜそちらにしないのか?」と開発部隊に質問することはありません。
それは、経理部門にネットワーク装置の知識が無いからです。
では、仮に(ありえませんが)知識があったらどうでしょう?
それでも、経理部門は、口出しするべきではありません。そこまですると、領域外に手を出しています。

Aさんの例の場合、購入するものが漫画であることを知っていたので、私に電話してクレームしてきたわけですが、例え英語版でなく、普通の漫画で会ったとしても、予算管理のトップである事業部長承認を得ているものに対して、とやかく言うべきではありません。

中小企業であれば、社員が「社員の福利厚生のため漫画を買いたい」と言ってきたときに、経理担当が「経費削減のため、福利厚生に有効とは思えない漫画を購入することは認めない」というのは有りだと思います。
しかし、社長がその漫画を購入することにOKを出していた場合、経理担当はそれを認めるべきです。
その会社の経営状態から見て、経費削減が求められているような状態であれば、その情報を社長に示すべきです。

まとめると、経理の役割は、会社の状況を正確に把握し、経営陣が的確な経営判断を行うための情報を提供することであり、事業部長承認が得られている細かな製品購入にいちいち文句をいうのは筋違いということです。

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この記事を書いた人
中越 成幸
日本大学大学院理工学研究科を卒業後、NECシステムテクノロジー株式会社(現:NECソリューションイノベータ株式会社)入社。 2010年にMBA取得後、合同会社アップクォーク設立。
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