相続税法の改正により、平成27年から基礎控除額が減額され、今までは無関係と思っていた世帯でも相続税のことを考慮する必要が出てきました。
それに伴い、生前贈与を実行するケースも増加してきています。
贈与税は相続税を補完するものと言われますが、今回は、国税庁のデータから贈与税の申告状況を見ていきたいと思います。
1.贈与税の体系
データの前に、まずは贈与税について概要を説明しておきます。贈与税とは、読んで字のごとく財産をもらったときにかかる税金ですが、財産をもらった場合は常に贈与税が関係するというわけではありません。贈与税はあくまでも個人が個人から財産をもらった場合を対象としており、例えば個人が法人からもらった場合は贈与税ではなく、所得税がかかることとなります。
贈与税の体系は、「暦年課税」と「相続時精算課税」に大別されます。
「暦年課税」は1年間の贈与について、まとめて課税する方法であり、特別なことをしない場合、通常はこの方法による課税となります。そして、「暦年課税」の中でも、受贈者(受け取る人)が20歳以上の直系卑属に該当する場合は、「特例税率」という一般税率に比べ優遇された税率が適用されます。
また、その他非課税特例として、住宅取得等資金、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与等があります。
一方、「相続時精算課税」は、次世代への資産移転促進を目的としており、一定の要件に該当する場合に選択適用できる課税方法です。内容は、誤解を恐れずにざっくりと表現すると、贈与時に贈与税を軽減する一方で、相続時に贈与済みの財産の分もまとめて課税するという制度です。
2.贈与税の申告状況
では、平成28年6月に国税庁より発表されている平成27年分の贈与税の確定申告状況等を元にして、その傾向を見ていきたいと思います。
元データ:国税庁 プレスリリース
平成27年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2016/kakushin_jokyo/index.htm
全体概要
・贈与税の申告書を提出した人員(申告人員)は53万9千人。
・そのうち申告納税額があるものは38万3千人。
・申告納税額は2,402億円。
・平成26年分と比較すると、申告者数は増加(+3.7%)、申告納税額は減少(▲14.3%)。
概要だけでも世相や法改正を反映した動きをある程度見て取ることができます。
申告納税額が減少していますが、これは、平成27年1月以後の贈与から最高税率が50%から55%に引き上げられたため、平成26年中に高額な贈与が実施され、その反動として納税額が減少していると想定されます。
暦年課税の申告状況
・申告人員は48万9千人で、その約半数(23万8千人)が特例税率適用者。
・申告納税額は2,161億円。
・平成26年分と比較すると、申告人員は増加(+4.1%)、申告納税額は減少(▲16.4%)。
相続時精算課税の申告状況
・申告人員は4万9千人。
・申告納税額は241億円。
・平成26年分と比較すると、申告人員は横ばい(▲0.1%)となっており、申告納税額は増加(+10.2%)。
相続時精算課税については、一度選択すると暦年課税の贈与制度に戻ることができないこともあり、一般的な相続対策としては暦年課税でコツコツと親族間贈与を行っており、それがデータにも表れているという印象があります。
3.まとめ
いかがでしょうか。相続税の課税ベースが拡大するなか、生前贈与の実行等により、贈与税の存在感も増しています。
一口に贈与税といっても、課税体系のバリエーションは豊富になってきています。贈与の際には、豊富なバリエーションを利用して最適なプランを選択することが重要ですね。